研究概要 |
口臭の原因は歯周病および舌苔によるものと考えられており、歯科医院での口臭測定は口腔ケア・治療の評価のためとしか認識されていないのが現状である。しかし、呼気中には、生体の代謝異常・疾患から来るさまざまな物質が含まれていると考えられ、それを全身疾患の指標として、早期診断、治療評価に適用することは、歯科医院においてまったく侵襲性なく行える口臭測定が、口腔領域の衛生状態だけではなく、全身の健康状態を鋭敏にモニターできる可能性が考えられる。そこで以下について検討を行った。なお、研究の遂行にあたっては、鶴見大学歯学部倫理審査委員会の承認の下、被験者にインフォームドロンセントを得て行った。 1.被験者からの口腔内ガス成分測定と疾患との関連性の分析 508名の呼気中ガスを採取し、各VSCレベル測定と官能検査との整合性について検討した。その結果、各VSCレベルと官能検査値との間にはp<0.0001と有意に相関していたが、相関係数は0.5未満と弱い正の相関であることが示された。したがって、口臭を形成しているガス成分には各VSC以外のものの存在が示唆された。次に疾患の有無と口臭の関連について、特に消化器系疾患と口臭との関係は慣習的に言われているため、その相関について検討したところ、肝疾患の患者にシステインを負荷させると鼻呼気中のメチルメルカプタン濃度が健康対照者に比べ高い傾向が示された。 2.被験者血液・歯肉溝液サンプル中のバイオマーカー測定 肝疾患ではバイオマーカーの一つとしてγGTPを測定することから、歯肉溝検査時の出血血液・歯肉溝液を採取し、におい成分に結びつく疾患特異的分子の候補としてγGTPを分析した。その結果、VSCのうちのメチルメルカプタンレベルと口腔内の局所血中γGTP濃度が弱く相関(0.220,p=0.09)する傾向にあった。したがって、疾患のマーカーとして口臭測定の有用性が示唆された。
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