研究概要 |
脳卒中患者の誤嚥性肺炎の予防を目的に,誤嚥性肺炎の予測因子の検討がされている.なかでも誤嚥性肺炎の発症には誤嚥の関与は重要であり,脳卒中患者を対象に嚥下障害と誤嚥の予測因子やスクリーニングテストの重要性について報告されているが報告により結果は異なる.そこで,誤嚥性肺炎の予測因子の検討と平行して,従来いわれている脳卒中患者の嚥下障害と誤嚥の予測因子や嚥下障害スクリーニングテストの有用性の検討を行い,さらに,従来の報告以外にVF検査での誤嚥を予測する関連因子の抽出を試みた. 【対象】急性期病院に入院し神経内科または脳卒中科で嚥下障害を疑われ,嚥下機能評価のために口腔外科に依頼をされた脳卒中患者88人(年齢:中央値72歳(50-89歳),男性65人,女性23人)を対象とした.【方法】VF検査での誤嚥と各検討項目の関連を多変量解析にて検討し,関連を認めた項目は感度,特異度および陽性反応的中度,陰性反応的中度,オッズ比と95%信頼区間から有用性を検討した.【結果】VF検査で誤嚥を確認できたのは67人(76.1%)であった.本研究で検討可能であった従来の誤嚥予測因子(構音障害,咽頭反射),障害スクリーニングテストは統計学的に有意ではなかった.VF検査での誤嚥を予測する因子として「modified Rankin Scale(mRS)」,「歩行」,「食事時介助」が抽出された.【結論】本研究でVF検査での誤嚥と関連する因子として有用性の示唆された「mRS」,「歩行の可否」と「食事時介助の有無」は,嚥下機能を熟知していなくても簡便に評価できるため,脳卒中後の誤嚥を予測する良い指標になり得ると考えられた.
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