研究概要 |
【背景】脳卒中後の重要な合併症である肺炎は,罹患することで脳卒中発症後30日間の死亡率は3倍になり,その肺炎の多くは誤嚥性肺炎(Aspifation Pneumonia:以下AP)といわれている.そこで,脳卒中患者を対象にAPの発症に影響する因子の検討がされている.しかし,嚥下機能評価に基づいた栄養摂取経路・食性の変更,訓練といった対策による影響を考察した研究はない.本研究では,嚥下機能評価に基づいた誤嚥に対する対策の影響を考慮してAP発症の関連因子を検討した. 【対象】脳卒中発症から7日以内に急性期病院に入院し,嚥下障害があると疑われ口腔外科で評価をした143人(年齢:中央値72歳(43-92歳),男性103人,女性40人)を対象とした. 【方法】脳卒中発症後1年以内のAP発症と各検討項目との関連を検討した.脳卒中発症後1年以内のAP発症は,APの発症時期を嚥下機能評価の前後で分け,1)嚥下機能評価前のAP発症と2)嚥下機能評価後のAP発症を比較して,それぞれで多変量解析した.嚥下機能評価後にはすべての例で摂食嚥下機能訓練などの介入を行っている. 【結果】脳卒中後1年間に,APに罹患したのは35/143人(24.5%)であった.APの発症と関連を認め認めた項目は,1)嚥下機能評価前のAP発症では「男性である」・「構音障害あり」・「義歯の使用あり」で,2)嚥下機能評価後のAP発症ではCT/MRI画像所見で「脳萎縮あり」・「大脳基底核に梗塞巣あり」・「入院前のBarthel Indexが100点未満」であった. 【結論】嚥下機能評価を行った後に引き続いて実施された食性の変更,訓練などの治療によりAPの発症率は減少し,さらにAPの発症に関連する因子の重みは変わることが示唆された.
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