研究概要 |
従来の超音波計測装置による歯肉厚さ計測法の空間解像度は数ミリ程度で、歯周組織構造の把握に必要な解像度を得られない。本研究では高周波超音波を用いることで空間解像度を飛躍的に高めたエコー計測を実施し,歯槽骨表面のトポグラフィー検索を可能とする信号計測システムを開発した.平成19年度はパイロット研究として、慢性辺縁性歯周炎患者10名および健常者3名を対象として、被験者毎に滅菌可能なディレイ材を検知部に取り付けた20MHz高周波探触子をパルサーレシーバーにて駆動し,これを歯肉に接触した際に得られたAモード波形信号をパーソナルコンピュータ上に転送、音響波形解析プログラム信号中のエコーと見られるスパイクの強度と潜時を計測した。その結果、唇側付着歯肉におけるエコー強度(V)および潜時(μs)の平均値は各々23.8±20.3および1.43±0.29,口蓋側歯間乳頭部では5.4±2.3および3.99±0.66であった.歯肉厚さの小さな部位より得られたシグナルには,直下にある歯槽骨面に由来すると思われる明瞭なエコーが含まれる一方,歯周炎の罹患によって見かけ上の歯肉厚さが増加したと思われる口蓋側歯間乳頭部では,エコーの潜時が相対的に延長すると共に,明瞭なエコーは検知されにくくなる傾向があることが明らかとなった。従って、歯周組織内部構造の3次元画像構築を前提として高周波超音波プローブを用いた結果、従来の超音波計測と比較してエコー信号の空間解像度は著しく改善した。さらに歯肉と接するプローブ先端部を分離し滅菌可能とし、臨床応用の際に必須となる滅菌行程に対応した実用システムを構築した。次年度は超音波エコー信号より空間画像を得るためのデジタル音響信号解析アプリケーションを構築し、精細な歯槽骨表面像の獲得を試みる。
|