(1)歯肉溝滲出液生化学炎症検査とメタボリック指標との関連について 本研究では、末梢血等メタボリックシンドローム指標とGCF検査による歯周炎症マーカーとの関連性について検討した。GCFは、歯科検診時に歯科衛生士が採取用筆(ペリオキャッチャー、いかがく、京都市)を用いて通法により採取した。採取された試料は一括して検査センターに配送され、検査センターでは、ラクトフェリン(Lf)、α1-アンチトリプシン(AT)、ヘモグロビン(Hb)、IgA、AST、LDH、ALPの7項目について生化学検査を行った。それぞれの検査項目のカットオフ値は、先行研究の結果に基づき、Lf:670ng、AT:570ng、Hb:130ng、IgA:870ng、AST:10mIU、ALP:3mIU、LDH:2mIUを用いた。メタボリックシンドローム指標は、腹囲(BMI含む)、脂質、血圧、血糖、追加リスク数を用いた。事業所健診受診者男性557名のうち、すべての記録が揃った40歳以上の440名(48.3±5.9歳)の健診記録を分析した。生化学検査所見との関係の検定にはχ二乗検定を用いた。有意水準は5%とした。 GCF検査所見者割合は、Lf:16.1%、AT:7.0%、Hb:7.7%、IgA:43.2%、AST:17.5%、LDH25.7%、ALP:20.0%であった。メタボリックシンドロームリスク項目数(0-3)の人数分布は、40.9%、3.6%、13.2%、42.3%だった。メタボリックシンドローム指標とGCF検査所見との関連がみられたのは、脂質ではIgA(P=0.036)、血圧ではALP(P=0.046)、血糖ではLf(P=0.021)、Hb(P=0.028)およびIgA(P=0.013)、追加リスク数ではLf(P=0.014)、LDH(P=0.049)であった。腹囲との関連はみられなかった。本調査の対象集団におけるメタボリックシンドローム指標と歯肉溝浸出液検査による歯周炎症のマーカーとの間に関連性が示唆された。 公衆衛生活動に関心の高い開業歯科医院に協力を求め、歯肉溝の炎症検証検査についての意識調査を開始した。 (2)歯肉メラニン色素沈着とニコチン依存度との関係 倫理委員会で承認された研究計画に基づき禁煙外来担当医師および歯科医師に資料収集の協力を求めたところ9施設の協力が得られ、40名の口腔写真および各種禁煙指標に関する資料を収集したところである。
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