研究概要 |
看護業務は,患者の移送など重量物取り扱い業務に分類され,腰痛発生リスクを伴うものが多い.そこで本研究では,腰痛の原因が「患者の状況に合わせた看護動作」である点に着目し,看護技術動作の腰部へおよぼす負荷量を定量的に,かつ簡便に測定する手法の開発を目的とする. 本年度は看護技術の中の日常生活援助技術の動作に含まれる姿勢を,10個の基本姿勢を基にした携帯型作業姿勢診断システムで分析した.その結果,看護師の業務である日常生活援助技術には腰痛を引き起こしやすい姿勢(前かがみ,抱きかかえなど)が多く含まれていることが定量的に明らかになった.特に技術実施時間に比例して,腰部への負荷や辛さは大きくなっていた.また,ベッドから車椅子への移乗介助技術における腰部の筋活動量と腰部のひねり角度を技術方法の違い別に測定した.その結果,技術方法の違いや姿勢により,腰部の筋活動量に違いが見られた.看護技術における姿勢の分析と腰部の筋活動量の測定結果より,補助用具の使用や,ボディメカニクスの有効的な活用によりその負荷量は軽減できることも示唆された.さらに看護師の協力を得,日常業務中に実施している移乗介助技術においても同様に測定した.看護師により実施する技術方法に違いがあったが,腰部への負荷は,患者を抱える時や引き上げる時に共通して大きくなることも示された.これらの結果をもとに,腰部への負荷量を数値化,定量化する方法を検討する.
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