看護研究での量的研究と質的研究における認識論的な差異から生じる信念対立の問題は、構造構成主義を採用することで回避できる。しかし、量的研究者の質的研究に対するナイーブな不信感を除くためには、質的研究における主観的テクスト解釈についての、理論的な説明が不可欠である。竹田青嗣による会話の現象学的信憑構造、ソシュールの一般言語論によるラングの社会的構成と個人内構造、およびチョムスキーによる脳の深層構造における普遍文法の概念を取り込むことで、ある程度の共通了解を得られるような理路を構築できる可能性を示唆することができるものと考えられた。 質的研究の結果の一般化は、統計学的一般化の視点からではなく、 Yin(1994)が指摘したように分析的一般化として、エビデンスになり得る。さらに西條(2005)が指摘したように関心相関的「継承」とアナロジーにより、継続的にまた他の研究者に活用され得ると考えられる。本研究のこれまでの結論として、構造主義科学論と構造構成主義に基づき、言語に関する最新の仮説を考慮すると、質的研究も科学として一般化可能な科学的エビデンスをもたらすことができると考えられる。
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