研究概要 |
平成19年度は,主としてタイ、フィリピンの看護学教育および保健医療政策、看護師の社会的地位や役割に関して,大学の看護学科,政府関係機関,看護協会等にて聞き取り調査を行なった。さらに文献,資料,シラバス,教科書等の収集を行なった。現地調査後は,研究者間での情報共有を行なった。 その結果,タイは,看護学教育はすべて大学4年課程でおこなわれており,カリキュラム構成や基盤となる看護哲学、理論については,主にアメリカのものを取り入れていた。一方で,薬草療法やマッサージなど,伝統的な療法も教育内容に含まれており,看護研究も進められていることがわかった。看護師の社会的地位は,女性の職業としては比較的高く評価されており,労働力の移動として他国への送り出しは行なわれていない。 フィリピンは,積極的に海外へ看護師を送り出す政策をとっており,看護学教育のカリキュラムは統制されている。送り出し先としてアメリカ,オーストラリア,北欧,サウジアラビアなどがあげられ,多くの国々で看護実践を行なうための,標準化されたプログラムが形成されていると考えられる。しかし,看護実践上,対象者と看護者の社会、文化的背景の相違が,どのように実践に影響しているのか,また,文化的摩擦を回避するためにどのような教育が行なわれているのかについては,十分な調査にいたらなかった。 両国は,看護学教育のカリキュラム構成や看護哲学、理論について,アメリカおよび先進国のものを取り入れていたし自国ならではの伝統、文化を取り入れた看護理論,看護方法については,さらなる調査が必要である。看護師の移動に関しでは,両国は対照的な政策をとっており,そのことが臨床現場にどのような影響を与えているのか,さらに,看護教育場面や臨床場面を調査する予定である。
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