1.研究背景および意義 妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension: PIH)の発症の原因には、遺伝や胎盤因子などが報告されているが、活性酸素に関係するビタミンの摂取や運動などによる予防効果も報告されつつあり、自己管理できる方法として注目されている。 2.研究目的 PIH妊婦の生活習慣の特徴を明らかにするとともに、妊婦の血液、臍帯血(動・静脈血)を用いて、酸化ストレスマーカーと個々の生活習慣との関係について明らかにする。 3.方法 1)都内A病院で母児間の酸化ストレスの影響を明らかにするために、正常妊婦10名の分娩時の血液、臍帯血(動・静脈血)を採 取し、酸化ストレスマーカーの一つコエンザイムQ10(CoQ10)(酸化型・還元型)をHPLCにて測定し、母児で比較した。 2)埼玉のA大学病院の妊婦を対象に生活習慣の質問紙調査・採血を行い、PIH妊婦8名および正常妊婦39名の生活習慣の比較を行った。酸化ストレスマーカーの分析は現在解析中である。 4.結果 1)都内A病院での調査対象の妊婦の平均年齢は34.8歳、平均分娩週数は39.4週であった。妊婦の平均CoQ10値(ng/ml)は、酸化型75.2、還元型1616.6であった。また、胎児の臍帯動脈では、酸化型27.2、還元型129.4、臍帯静脈では、酸化型20.8、還元型134.0であった。酸化型、還元型とも母体のほうが有意に高値を示した(P<0.001)。 2)A大学病院でのPIH妊婦群は、平均年齢34.8歳、非妊娠時BMI25.8(kg/m2)で正常妊婦群は、平均年齢34.2歳、非妊娠時BMI20.9であった。属性・生活習慣を両群で比較したところ、PIH妊婦は、正常妊婦と比べBMI値が有意に高く(p<0.05)、就労妊婦では、就労時間がPIH妊婦で有意に長い(p<0.05)ことが明らかになった。朝食摂取の習慣や運動習慣などでは差はなかった。 5.結論と今後の課題 1)正常妊婦の場合はCoQ10の結果から、母児間での大きな影響は少ない。 2)PIHの妊婦の特徴的な属性と生活状況が明らかになった。就労による身体的負荷は妊娠経過に影響することが示唆された。今後他のマーカーを用いて解析する予定である。
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