研究概要 |
初年度は,児童青年精神科思春期病棟において少年たちが示す暴カ・いじめ等の問題行動に看目し、問題行動とそれに伴う事象を相互の関係性から分析することを目的として実施した。 児童青年精神科思春期男子病棟で入院治療中の11歳〜15歳の少年と治療・療育に関わる病棟スタッフを対象に,遊びや学習など活動場面に参加しながら参加観察を行った。 《結果》 1.観察したデータから問題行動を表出方法・内容によって『身体的攻撃』,『言語的攻撃』,『心理的攻撃』の3つの攻撃行動と定義した。問題行動が発生しエスカレートしていく状況には,少年間の関係や周りの少年・スタッフの関与が攻撃を加勢するカとしても、相手を擁護する力としても働き,問題行動の成り行きに影響していた。 2.問題行動のエスカレートに関わるダイナミクスとして以下のダイナミクスがみられた・心理的攻撃:攻撃相手から「思うような反応が得られない」・言語的攻撃:「行動を非難される」,「職員の圧力が加えられる」,相手の「関心を引き出す」,「納得できない思いをぶつける」・身体的攻撃:「相手をコン卜ロールしたくてもできない」,相手から「心理的苦痛を与えられる」,メッセ一ジを発したのに相手から「関心・思うような反応が得られない」 3.少年間でみられた問題行動の特徴として『力関係を重視する傾向』が認められた。また,これらの少年間で示された問題行動には,『相手の感情を確かめる』,『存在感をアピールする』,『優越感を得る』の意味があると解釈された。 今年度の研究で,問題行動の発生に関わる現象にっいて明らかにすることはできたが,観察のみをデータとするテザインを取ったため,問題行動に関連する状況をどのように捉えているか,認知の部分を分析に加えることができなかった。そのため,次年度の研究において,問題行動に関連する認知の調査を加えて分析していく必要があると考える。
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