喫煙による健康被害は、多くの先行研究で明らかになっているにもかかわらず、精神科医療においては喫煙する患者が多くみられ、その歴史からも喫煙することは長期入院者にとっての「唯一の楽しみ」「比較的望ましい嗜癖として職員にも患者にも愛されてきた歴史がある」とされてきた。そのため、現在でも単科の精神科病院では喫煙に対して肯定的であり看護者も喫煙するものが多いと考えられる。精神科において禁煙が進まないのは、こうした患者の生活を支えている看護者の喫煙状況とその意識が問題ではないかという仮説をたて、その検証を行った。 本年度は、四国内にある単科の精神科病院に勤務する看護者712名に対し留置法によるアンケート調査を実施した。対象者には文書で研究趣旨を説明し自由意思にて回答を得た。解析はSPSSVer.15.0を用いた。結果は667名より回答を得た。男性の喫煙率は69.5%、女性の喫煙率は28.5%であった。ニコチン依存度テストで5点以上の者の割合は男性62.5%、女性42.8%であった。この数値は日本看護協会の2006年度の調査結果が男性54.% 21.5%と比較しても高い結果が得られた。患者の喫煙が入院中の気分転換になっていると思う者62.8%、患者に禁煙を勧めるのは唯一の楽しみを奪うことになると答えた者53.9%、患者と喫煙を共にする利点があると答えた者84名(55.3%)、精神科での喫煙には独自の歴史があると答えた者40名(26.3%)、患者が禁煙をするのは難しいと答えた者95名(62.5%)であった。 これら喫煙に対しての看護者の意識については先行研究がないため比較することが現時点で難しいことから来年度は精神科以外に勤務する看護者に対しても同様の調査を実施して研究目的である喫煙についての意識と喫煙状況との関連を明らかにする予定である。
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