平成20年度は、精神科病院に勤務する看護者の喫煙の実態調査および禁煙に対しての意識調査を実施するためのプレテストとして、精神科病院に20年以上勤務する看護師長2名、事務長1名に対して面接調査を行い、精神科病院におけるたばこの歴史的な意味、精神科病院の歴史とその環境、文化、看護者の位置づけ、などについて得たデータを質的に分析した。その結果、看護者の喫煙行動には精神科の歴史的意義や背景、環境などが関与し、個人レベルにおいては看護者の職務満足度や歴史的な精神科医療に対する理解などの因子が影響していることが推測された。これらの結果から仮説をたてたうえで、喫煙者に対しては喫煙している状況と喫煙開始の年齢、ブリックマン指数、TDS(Tobacco Dependent Screener)と近年の禁煙への社会的状況についての意識などを5件法で回答を得た。非喫煙者に対しては、病院内で喫煙している患者と看護者の状況についての意識について質問紙を用いて回答を得た。 調査は全国の精神科の病院に依頼し、8病院より承諾を得て計862名から回答を得た(回収率76.2%)。これらの質問紙調査から得たデータは因子分析を行い仮説を検証した。その結果、精神科病院における喫煙行動には喫煙に対して寛容でストレスを緩和するための方策として喫煙行動を許容する病院という管理のあり方と歴史的にたばこによってコミュニケーションを円滑に図ろうとするなどのたばこを一つの方策として活用してきた組織文化を背景としていることが明らかになった。そのため、患者も看護者も禁煙が進まないという結果が生じているが、近年の禁煙への社会的な方向性については自らも葛藤していることが職務満足が低い看護者ほど多いことが明らかになった。
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