昨年実施した、児童相談所および関連機関を対象にした18歳以上の虐待被害者支援の実態と連携機関について論文にまとめた。日本子どもの虐待防止学会において、調査の自由記載欄の88の記載内容を中心に口演を行った。研究計画書では、自主企画「虐待被害者の自立支援を考える」を予定いていたが、大会会場の都合で自主企画自体が中止となり、学会発表とした。この学会においてシンポジュウム「高齢児童の自立支援」にも参加した。弁護士を中心とした企画で自立支援ホームの必要性についてディスカッションがあった。日本には、現在46ケ所の自立支援ホームがある。今後は、全都道府県に設置されていくものと予測されるが、課題も山積している。入所者は、1ホームで数人程度であり、経営上の経済的な問題、入所者の働く場の確保、確実の生じる人間関係の問や抑うつ状態などに対処するための医療と福祉の連携の未整備などである。また、親権の問題も大きく弁護士の役割は大きいが、大都市圏以外では、子供の虐待問題に取り組んでいる弁護士が圧倒的に少ない現状もある。本年度は、国際学会で情報収集も行った。2年ごとに開催される世界児童虐待防止学会(香港)に参加して、イタリア、オーストラリア、南アメリカなどの関係者から、18歳以上の被害者の支援の実態について情報収集を行った。ひとつの課題として明らかになったことは、日本には10代のための支援機関が存在しないことであった。オーストラリアは、虐待被害者も含めて、その後摂食障害、薬物依存、性的逸脱行動などに対応する10代のための公的機関がある。21年度に、福岡市に子どもの村福岡が開村されるが。これは世界的な取り組みの初の日本導入であるが、入所対象は幼児、学童であった。
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