本研究課題は高齢者のコミュニケーション評価法と、介護者のケアコミュニケーション教育プログラムの開発を目的とするものであるが、これと並んで、言語学的には意味形態論の方法論的精査や応用言語学的研究等によって、本邦では未開拓領域である老年言語学の学問的創設を企図するものでもある。本年度はこの目標を実現するための第1段階として、文献学的には高齢者コミュニケーションに関連する諸分野の先行研究の包括的な整理分類と考察を行ったが、同時に、フィールドワークとしては、国内外において、参与観察研究、インタビュー調査、質問祗調査を実施し、臨塊データの収集と分析を行った。具体的には、本課題に関する国内の研究協力組織である日本老人福社財団「大阪ゆうゆうの里」において参与観察研究を継続的に実施し、入居者とケアスタッフのコミュニケーション場面の音声データの収録、文字化、解析を行った。またインタビュー調査を当施設の弁護者と入居者に対して行い、併せて、質問紙調査を当施設の入居者全員と日本老人福祉財団の全施設において実施した。加えて大阪府下の2つの特別養護老人ホームと、関西医科大学附属病院看護部並びに附属看護専門学校の協力を得、老人ケアに関するインタビュー調査と質問紙調査を実施した。また海外隅真に関しては、ドイツのヴィッテン大学医学部看護研究所、ドイツ高節煮支援機構、ドイツ看護協会等の協力を得て、ドイツ語圏を中心にヨーロッパでの研究状況等に関する調査を行い、北米英語圏においては、カナダを訪れ、ビクトリア大学、カモソン短期大学の研究状況を調査すると共に、公立、私立、NPO法人の6つの高齢者施設を視察し、ケアコミュニケーションに関するインタビュー現地調査等を行った。これらの国内外での臨地調査を通して、研究の第1段階としては十分なデータ蓄積を実現することができた。
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