研究概要 |
本研究課題では、ウイルスベクターを用いてin vivoの小脳のプルキンエ細胞,顆粒細胞,抑制性介在ニューロンあるいはバーグマングリア特異的に,しかも広範囲に長期間にわたって遺伝子発現させる技術を確立し,これまで技術がないために解明されずにいた神経科学の難問の解明にとりくむことを目的とした。 今年度は、まずMSCVプロモーターがプルキンエ細胞選択的に働くことを明らかにし報告した。さらに、これまで報告されている細胞特異的プロモーターに関して、プルキンエ細胞特異的プロモーター領域の同定、バーグマングリア特異的プロモーター領域の同定を行った。これらのプロモーターを組み込んだレンチウィルスベクターを用いて、遺伝性運動朱調マウスに外来遺伝子を導入することで、運動失調を改善させることに成功した。とくにデルタ2グルタミン酸受容体においては、細胞外アミノ末端ドメインが機能に重要であることを明らかにした。 小脳疾患の遺伝子治療を考えた場合、導入した遺伝子がどの程度発現しているのか非侵襲的に検査できれば有用である。そこで、ドーパミンD2受容体遺伝子をレポーターとし、末梢から静注した放射性薬剤(IBF)が、小脳プルキンエ細胞に発現させたD2受容体を認識できるのかを検討した。その結果、オートラジオグラフィにて、小脳のD2受容体遺伝子発現部位に一致してIBFの特異的結合が観察された。レポーターとしてはD2受容体全長である必要ではなく、IBFと結合する領域だけで十分と考えられる。このように、IBFと結合するD2受容体遺伝子領域は、脳疾患の遺伝子治療においてレポーターとなり得ると考えられ論文発表を行った。
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