研究概要 |
前頭葉と皮質下の複数の脳領域からの細胞活動記録を実施し、これを完了させた。細胞活動記録の終了後、自作プログラムを用いて細胞活動の活動特性をミリ秒のオーダーで解析した。解析には、Receiver Operating Characteristic(ROC)curveを用いた解析手法やInverse Interspike Intervalを用いて時間解像度を上げたのちに統計処理を行う手法を導入した。続いて、こうして得られた細胞活動特性の脳内分布を明らかとするために、組織標本上での記録部位を再構築した。脳の各部位で電極の先端から通電することによって組織内に電極マーカーを残し、動物の脳を灌流固定した。薄切脳標本を作成し、電極マーカーを基準として細胞活動が記録された部位を再構築した。前頭葉と皮質下の記録部位において、各課題要素を反映する活動の分布地図を作成した結果、領域間の特異性、ならびに、領域内の特異性を解明することができた。先行研究で、皮質下領域と前頭葉各領野との特異的な結合様式を既に解明しているので(Eur.J.Neurosci.33 : 285-297 ; Eur.J.Neurosci.31,1402-1413)、この結果と合わせることを行った。前頭葉と皮質下領域で細胞活動特性や細胞活動が始まるタイミングをミリ秒のスケールで比較した結果、前頭葉では複数の情報を統合する過程が主要であるのに対して、皮質下領域では個々の情報を個別に表現することが主要であることが示唆された。更に、ネットワーク機構をより詳細に検討するために、多点同時記録を行った。同時に記録された神経活動を一試行毎に解析すること、ならびに、神経細胞間の情報の流れを解析することよって、随意運動の発現を支える一連の情報処理メカニズムを神経細胞間の機能的相互作用として明らかとすることができた。
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