環境化学物質は、日常的な曝露レベルであっても、長期曝露によって、ヒトや野生動物に様々な病態を引き起こす。野生動物もヒトと同じく、常に食餌や棲息環境の汚染を通じて、環境化学物質を生体内に取り込んでいる。そこで、本研究では「化学物質を起因とする野生動物の病態」の中で、発癌などに焦点を当て、その現状の調査を行うことを目的とする。一方で、残留性汚染物質POPsの分布に国境はなく、その汚染は地球規模で広がっている。特にアフリカでは近年における急激な開発と汚染の進行が懸念されている。そこで、本研究では、野生動物の発癌リスクについて国内における調査はもとより、アフリカについて、初めて汚染物質の実態の把握と、野生動物に対する影響の調査を行った。 平成20年度はザンビアを中心に環境汚染の調査を行った。ザンビア国内のほぼ全国から600種類以上の環境試料や魚類、甲殻類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など広範囲の野生動物の臓器を採集し、蓄積する環境汚染物質の分析を行った。ザンビアのカブエ地域やコッパーベルトの鉱床周辺では銅や鉛を中心に重金属の汚染が拡大しており、鉱床から離れた国立公園にもその影響が及んでいることが明らかになった。 また、国内では動物園動物から外来異物の代謝に重要なシトクロムP450およびその発現調節因子について解析を行った。シトクロムP450や環境汚染物質が標的とする発現調節因子(Arylhydrocarbon receptorなど)の機能の種差から汚染に対するハイリスク種の同定を行った。
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