環境化学物質は、日常的な曝露レベルであっても、長期曝露によって、ヒトや野生動物に様々な病態を引き起こす。野生動物もヒトと同じく、常に食餌や棲息環境の汚染を通じて、環境化学物質を生体内に取り込んでいる。そこで、本研究では「化学物質を起因とする野生動物の病態」の現状の調査と化学物質感受性を決定する要因について研究を行うことを目的とする。平成21年度は、外来化学物質の感受性を決定する因子の一つであり、平面構造を有する環境化学物質と結合し活性化されるarylhydrocarbon receptor(AhR)の種差について鳥類を中心に同定し、鳥類の中でもAhRのリガンド親和性は幅広く感受性が異なることが分かった。特に高感受性を持つニワトリAhR以外にも、初めて高感受性AhRを有する鳥類を同定した。また殺鼠剤など農薬に関し、鳥類と哺乳類、特にげっ歯類の感受性の種差について、その種差を引き起こす原因について同定し、明らかにした。 一方で、残留性汚染物質の分布に国境はなく、その汚染は地球規模で広がっている。特にアフリカでは近年における急激な開発と汚染の進行が懸念されている。そこで、本研究ではアフリカについても初めて汚染物質の実態の把握と、野生動物に対する影響の調査を行うことを目的とした。平成21年度はザンビアおよびケニアにおいて環境汚染の調査を行った。特に野生げっ歯類や飼育動物であるウシ、魚類を中心に、農薬や重金属の汚染を明らかにした。
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