フィールドにおける環境汚染研究では、本年度は、昨年に引き続き、全国より野生のRattus属を採集し、環境化学物質の影響について解析を行った。国内における野生げっ歯類は一部の地域で比較的高濃度の鉛やカドミウム、ヒ素に汚染されていることが分かった。しかしながら重金属の土壌濃度のGISデータとは一致せず、土壌由来の汚染に加えて、比較的、食物等を通した汚染の影響が強い可能性が考えられた。また、海外では、ザンビア、ケニア、ガーナを中心に環境汚染のフィールド調査を行った。特にザンビアでは、鉱床地域の影響が野生げっ歯類だけではなく、飼育動物であるウシなどにも現れていることが分かった。また水銀による汚染が懸念されていると考えられていたガーナでは、野生動物や環境試料中の水銀濃度は低く、ヒ素濃度が高いことが明らかとなった。一方、化学物質の活性化及び解毒に関する動物種差の研究では、さまざまな階層の生物種からシトクロムP450およびその発現調節因子のクローニングを行った。国内では、平成21年度に引き続き、動物園動物の採集を行った。希少動物を含む、さまざまな階層の生物種において、生物種横断的に、環境化学物質を代謝するシトクロムP450やその発現調節因子、第二相抱合酵素について、キャラクテリゼーションを行った。特に、食肉目の異物代謝酵素のゲノム解析を行い、欠損する第二相抱合酵素などを明らかにした。また、鳥類の化学物質感受性に関わる因子に関する分子生物学的解析を行い、環境汚染にハイリスクと考えられる種とその原因を同定した。
|