本研究では線虫C.elegansの胚発生をモデル系として、RNAiによる遺伝子機能破壊と個体レベルのライブイメージングを統合的に用いることにより、個体発生における細胞骨格の動態を制御する遺伝子ネットワークを明らかにすることをめざす。今年度は以下の研究を行った。 1)線虫初期胚における紡錘体微小管・中心体の動態の4次元イメージング解析法の確立 C.elegans初期胚における中心体・微小管・核膜・細胞膜・染色体等の細胞内構造を同時に2種類あるいは3種類可視化して3次元ライブイメージング(=多色4次元イメージング)を行うシステムを構築した。 2)線虫初期胚における中心体動態の定量的解析 野生型および細胞極性関連因子RNAi胚において、受精直後から第二分裂までの中心体と細胞膜の4次元イメージデータを取得し、その動態を定量的に解析した。その結果、中心体と核の相対的位置についての新たな表現型を見いだした。 3)γ-チューブリンとAurora Aキナーゼがそれぞれ独立に寄与する微小管合成経路の解析 われわれは以前の研究から、線虫初期胚にγ-チューブリンとAurora Aキナーゼがそれぞれ独立に寄与する微小管合成経路が存在することを見いだしている。今年度の研究により、Aurora Aが関与する経路は、細胞分裂期に凝縮した染色体周辺で形成される微小管合成に必須であることを見いだした。この染色体依存的微小管形成にはγ-チューブリンは関与していない。この結果より、これらの二つの微小管合成経路が時空間的に協調することが紡錘体形成に重要であると推測される。
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