墓に副葬される明器である俑は、中国美術史において重要な研究テーマの一つといえる。とくに隋唐時代の俑は、各地域の墓葬から紀年墓をはじめ豊富な出土例が報告されており、その様式変遷や地域性などを理解することが可能である。 本研究は、隋唐時代の俑について、紀年墓を中心とした出土資料の詳細な調査を行い、各時代・各地域の俑の特徴を把握しながら、様式変遷と地域性、そして制作技法や生産工房、葬送観念など多角的な視点から、隋唐時代の俑の成立と展開について明らかにすることを目的とする。具体的には、日本及び中国の第一線で活躍する研究協力者達の協力を得ながら、中国現地調査とテーマ研究を中心に、(1)南北朝時代の俑からの影響、(2)隋唐時代の俑の様式変遷と地域性、(3)隋唐時代の俑の制作技法と生産工房、(4)隋唐時代の俑に見られる葬送観念、の4つの問題に独自のアプローチを試みる。本研究は、研究代表者がこれまで実施してきた南北朝時代の俑に関する美術史的研究の成果を発展、展開させるもので、近年大きく注目されている南北朝から隋唐時期の美術史研究に新たな視点を提供しようとするものである。
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