研究概要 |
本研究の目的は,相互行為における応答の力が基礎となり,子どもと養育者の双方が責任を徐々に発達させると考えて責任が文化的に形成される仕組みを探求することである。プロジェクトの最終年度となる平成23年度は,本務校のサバティカル制度を活用して,平成23年4月から9月にかけて,おもに米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)言語・相互行為・文化研究センター(CLIC)に滞在して研究活動を行った.具体的には,CLICを構成する教員らが開催する各種のセミナーに継続的に参加し,自身の研究発表も3回行った. 日本国内では,乳幼児がいる家庭10軒(乳幼児は計28名)の定期訪問(平成19年度から継続中)を行い,養育者-乳幼児間の身体的相互行為,初期音声コミュニケーション,やりとり活動,模倣活動に関する映像資料を収集した.また代表者や協力者が調査を行っている米国在住の日系家族やアジア・アフリカ諸国でも上記に対応する動画資料を収集した.さらに責任形成における人類学的な基盤を探るため,大型霊長類の動画資料の収集も平成21年度から継続して行っている.これらと並行して収集された資料のデジタル化・整理・分類を行うとともに,動画資料の書き起こしに基づいて国内外で月に1~2度のデータセッションを行ってきた. 平成23年度は特に,初期音声コミュニケーションにおける音楽性について集中的に検討した.音楽性は養育者-子ども間相互行為に時間的な構造を導入する.こうした構造の分析を通じて,相互行為のなかでそれぞれの参与者が注意,姿勢,位置取り,感情を他の参与者と協調的に調整していることを明らかにした. 代表者と協力者はこれらの研究成果の一部を代表者が定期的に主催してきた国際ワークショップ(「責任の文化的形成セミナー」)をはじめとする国内外のシンポジウムや学会で議論した.また調査参加者に向けた報告書を作成し,保護者に配布するとともにHPに掲載した.
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