研究課題
高等脊椎動物は、経験した刺激-結果、あるいは刺激-反応-結果の関係を、それぞれ個別に学習するのではなく、同じ結果を導く刺激をグループ化して認識している、すなわち、刺激の機能的等価性に基づいて刺激のカテゴリ化を行っていることを示唆する知見がある。このような刺激のカテゴリ化は、情報表現の効率化に役立つだけでなく、同じカテゴリのメンバーは同じ性質を持つという、刺激の等価性に基づく推論的思考を行う基盤になりうる。本研究では、刺激等価性に基づくカテゴリの成立と、カテゴリに基づく推論について、その脳内機序を明らかにするため、カテゴリを用いて推論を行わせる「カテゴリ逆転課題」をサルに行わせ、課題遂行中に神経活動の細胞外記録を行った。これまでに得られた結果は次の通りである。サルの前頭連合野には、報酬を予測する手がかりとなる視覚刺激に反応するニューロンが多く見つかった。それらのニューロンは、視覚刺激に対する反応から、大きく3つのグループに分けることができた。A)刺激と連合している結果に関係なく、常に特定の範疇に属する刺激に強い反応を示し、カテゴリをコードしていると考えられるニューロン、B)特定のカテゴリに属する刺激が特定の結果と連合しているときに強い反応を示し、カテゴリと結果の連合をコードしていると考えられるニューロン、C)どのような刺激でもそれが特定の結果に連合しているときに強い反応を示し、カテゴリを超えて、刺激によって予期される結果をコードしていると考えられるニューロン、である。これらの結果から、前頭連合野が、他の領域から入力されたカテゴリの情報に自らが保持しているルールの情報を統合することによって、適切な行動を選択し、その情報を他の脳領域に出力していることが示唆された。
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