研究課題
1. マッハ・ツェンダ干渉計における量子雑音測定:電子系におけるエンタングルメント生成の舞台として注目されているのが電子版マッハ・ツェンダ干渉計である。我々はこの系を用いて、干渉強度の温度依存性と量子雑音を測定した。我々の実験の特徴は、熱雑音を測定することによって正確な電子温度が決定できることであり、それによって、干渉強度の温度依存性を正確に明らかにした。2. 電子干渉計における普遍的な非平衡位相緩和:電子マッハ・ツェンダ干渉計において、近年、非平衡状態において見いだされた特徴的な位相緩和現象は、起源が不明であった。我々は、ファブリ・ペロ干渉計とアハロノフ・ボームリングという、二種類の電子干渉計においても同様の現象の観測に成功し、それを特徴付けるエネルギースケールが干渉計の大きさでほぼ決まることを見出した。このように非平衡位相緩和現象に普遍性があることは本研究で初めて見いだされたものであり、干渉計内の伝導電子間に働くクーロン相互作用が位相緩和の原因であることを示唆する。3. 量子系における「揺らぎの定理」:物理学においては、系の応答を記述する理論として線形応答理論が確立しているが、その限界を超えて非平衡系をよりよく理解しようという試みが長年行われてきた。その一つが「揺らぎの定理」である。我々は、電子干渉計を用いて量子雑音の精密測定を行い、実験的に非線形性と非平衡性を定量的に結びつける関係式を見いだし、その結果が揺らぎの定理に基づく予想に合致することを見いだした。この結果は量子系における揺らぎの定理を世界で初めて実験的に検証したものである。
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