研究課題
1. 量子系における「揺らぎの定理」:物理学においては、系の応答を記述する理論として線形応答理論が確立しているが、その限界を超えて非平衡系をよりよく理解しようという試みが長年行われてきた。その一つが「揺らぎの定理」である。我々は、電子干渉計を用いて量子雑音の精密測定を行い、実験的に非線形性と非平衡性を定量的に結びつける関係式を見いだした。さらに、微視的可逆性という揺らぎの定理の大前提になっている仮定が実際に成立していることを検証することに成功した。2. 近藤状態における2粒子散乱の観測:我々は、半導体を微細加工することによって、大きさが数100nm程度の領域に数十個の電子を閉じ込めた人工原子を作製した。その人工原子中に単一スピンを作り出し、近藤効果を引き起こすことに成功した。さらに、独自の高精度の電流揺らぎ測定を行い、近藤状態によって電子が散乱される様子を調べた。その結果、一つの電子が打ち込まれると、人工原子から複数の電子が散乱されてくるという二粒子散乱過程の検出に成功した。これは、近藤効果によって形成された量子多体状態に特有の散乱現象である。このような研究は、固体素子上の人工原子に電子を衝突させることによって量子多体状態の内部構造を探るという「衝突実験」であり、近藤効果の研究に新展開をもたらすものと期待される。さらには散乱された二粒子を用いてエンタングルメントの生成を行える可能性もある。
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