研究課題
本研究は、地球深部の環境に相当する超高圧高温実験により、最下部マントルおよび中心核の物質の構造やふるまいを理解しようとするものである。本年度はまず、天然組成の典型的なマントル物質(パイロライト)と玄武岩質海洋地殻(MORB)物質の電気伝導度を下部マントルの全域の圧力温度範囲で測定し、電気伝導度モデルを構築した。下部マントル中位では、鉄のスピン状態の変化により、電気伝導度が減少するはずであるが、観測ではそれが見えていない。観測精度の問題である可能性もあるが、伝導度の高いMORB物質が下部マントルに存在している可能性もある。また、酸化鉄、鉄-シリコン合金、鉄-硫黄化合物、鉄-炭素化合物の4つにつき、圧力-密度曲線を270GPaに至る超高圧まで決定することができた。その結果、酸素もしくは炭素が溶融鉄中に大量に含まれると、観測される外核の圧縮率よりもかなり大きくなってしまうこと、逆に鉄-シリコン合金と鉄-硫黄化合物の圧縮率は観測結果と整合的なことが示された。すなわちこのことは、酸素や炭素がコア中の重要な軽元素ではないこと、一方シリコンもしくは硫黄こそが有力候補であることを意味する。さらに、超高圧超高温の発生に向け、技術開発を精力的に行った結果、ついに364GPa・6000Kという、地球中心に相当する条件の発生に成功した。これは、当初の目標であった、364GPa・4000Kという数字を、温度の面で大きく上回った。これで中心核の圧力温度での実験がとうとう可能になった。
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