研究課題
本研究は地球の最下部マントルおよび中心核に相当する超高圧高温状態を実験室で実現し、地球深部の物性を実験的に明らかにしようとするものである。研究目的の大きな柱のひとつであった、地球中心に相当する超高圧・超高温(364万気圧・5000ケルビン以上)の発生に昨年度末までに初めて成功した。そこで、今年度前半に実験を繰り返し行って、地球最深部に位置する内核における鉄の結晶構造が六方最密充填構造であることを世界で初めてあきらかにした。また、下部マントル全域にわたる高圧下で、シリケイトメルトと下部マントルの代表的鉱物ペロフスカイト相との間の鉄の分配を実験的に調べた結果、75万気圧以上で分配係数が大きく変化し、メルト中に鉄が濃集することがわかった。さらに密度計算を行った結果、深さ1800kmより下の深部マントルでは、部分融解液が周囲の固体マントルよりも重く、下へ沈むことがあきらかになった。このことは、原始地球を覆っていたとされるマグマの海(マグマオーシャン)が地球表層のみならず、固体マントルの下にも広がっていたことを示唆する。マントル深部のマグマの海はゆっくりと冷却・固結し、いまでもマントルの底にわずかに残って、それが現在観測される地震波の超低速度域になっている可能性を示した。その他、MnGeO3を用いたアナログ実験により、最下部マントルの主要鉱物ポストペロフスカイト相のすべり面は001面であることをあきらかにした。このことにより、最下部マントルに観測される横波の偏光異方性はポストペロフスカイト相の変形によって説明されることがわかった。
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