研究課題
本研究は地球の最下部マントルおよび中心核に相当する超高圧高温状態を実験室で実現し、地球深部の物性を実験的に明らかにしようとするものである。本研究で開発した、内核に相当する超高圧・超高温の発生技術を用いて、今年度はFeOの状態図を作成した。実験は324万気圧、4180Kまでの条件で行った。その結果、外核中部に相当する圧力温度条件下(240万気圧、4000K)で塩化ナトリウム型構造から塩化セシウム型構造へと結晶構造が変化することを見出した。FeOが塩化セシウム型構造をとることは従来知られていなかった。外核が酸素を含む場合、外核の液体金属中でも鉄-酸素間の結合は、固体の構造転移と同じように変化すると考えられる。このことは同様の固体相転移を起こす、アルカリハライドに関する過去の研究からも示唆される。液体FeOの構造変化は負のクラペイロン勾配を持っていると考えられるため、外核の対流に大きな影響がある可能性がある。そこで数値シミュレーションを行った結果、対流は外核中位で遮断され、二層対流となることがわかった。その他、Fe-10%Ni合金のfcc-hcp相境界を内部抵抗加熱式のダイヤモンドセルを用いて精密に決定した。相境界をより高圧へ外挿した結果、内核の圧力温度下ではhcp相単相となることがわかった。また、FeOの塩化ナトリウム型構造相・ヒ化ニッケル型構造相の両者につき、絶縁体・金属転移が起こる圧力温度条件を決定し、地球のコア・マントル境界の環境下では金属のFeOが安定であることが明らかになった。
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