本研究では、大電力を高速かつ高効率で変換・制御するパワーエレクトロニクスの実現に向け、SiC半導体が有する優れた材料物性を最大限に活用した、理想的MOSFETの作製技術を確立することを目的としている。平成20年度では既存の電流検出型原子間力顕微鏡(C-AFM)に試料加熱と真空排気機構を付加してC-AFM技術をSiC-MOSデバイスの局所電気特性評価に適用し、酸化条件に依存した絶縁膜の特性劣化を詳細に調べた。またSiC基板の結晶評価を目的として、学内遊休設備(X線回折装置)の設備移管と移設を行い、基板の結晶性とMOSデバイスとの相関関係を評価するための実験環境を整備した。一方、当該研究課題の後期でのデバイス試作に向け、微細構造作製を行うためのパターン直接描画(パターン設計)ツールを導入した。本装置は微細デバイスパターンを設計するための設計ツールであり、本年度導入を完了しパターン設計に着手した。次年度導入予定の直接描画システムを用いて、生成したマスクパターン描画を実行し、平成19年度導入の加工(RIE)装置を用いて次年度以降の本格的なデバイス試作環境を整備した。SiC-MOS界面特性改善技術の研究においては、窒素プラズマ照射と水素アニールによる特性改善法について、水素アニール温度の最適化でさらに界面特性に優れたMOSデバイスの作製に成功した。またSiC表面をプラズマ窒化した後に酸化を施すことでMOS界面に効果的に窒素を導入できることを見出し、界面準位密度を低減することに成功した。さらに高誘電率AlON絶縁膜とSiO2薄膜とのスタック構造(AlON/SiO2/SiC)の下地SiO2層についても上記の特性改善手法が有効であることを実証した。
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