本研究では、大電力を高速かつ高効率で変換・制御するパワーエレクトロニクスの実現に向け、SiC半導体が有する優れた材料物性を最大限に活用した、理想的MOSFETの作製技術を確立することを目的としている。平成21年度では、デバイス試作に必要なレーザー直接描画装置とレジストパターン剥離用のプラズマアッシャー装置を導入し、微細デバイス試作環境を整備した。また電流検出型原子間力顕微鏡(C-AFM)に広範囲画像が取得可能なスキャナーを付加することで数十ミクロンスケールのデバイスのC-AFM評価が可能となった。これらの新規導入装置と本予算で導入済みの反応性イオンエッチング装置を用いて微細キャパシタを作製して信頼性試験を実施すると共に、C-AFMを用いて絶縁破壊箇所のナノスケール評価を行うことで、SiC-MOSデバイスの絶縁破壊メカニズムを解明することに成功した。またSiC-MOSFETの高移動度化に有効とされるカーボン面上に形成した熱酸化膜の界面電子状態を、光電子分光測定により評価し、カーボン面では伝導帯オフセットがシリコン面に比べて小さくなる為、リーク電流の増大を招くことを示した。さらに、プラズマ窒化SiC表面の熱酸化で形成したSiC-MOSデバイスに対して高温水素アニールを施すことで、界面電気特性に極めて優れたMOSデバイスを作製することに成功し、本研究課題で提案するHigh-k/SiCスタックの界面層として優れた特性を示すことを確認した。今後、SiC-MOSFET試作を進め、その優位性実証を目指す。
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