研究概要 |
単結晶シリコンの疲労メカニズム解明を目指して以下の2点を実施した. (1)表面酸化シリコン試験片の強度,疲労特性の評価 単結晶シリコンの疲労破壊に重要な役割を果たしていると予想される表面酸化層について,単結晶シリコン試験片を酸化処理することによって,制御された膜厚(100nmから200nm)の酸化層を有するシリコン試験片を作製し,引張試験を行い,酸化前後の引張強度の変化を評価した.酸化によって,強度はいったん増加したが,酸化膜厚を増加させると逆に強度は低下した.また,破壊の起点が表面だったものが,酸化後はシリコンの内部で発生している.この破壊の起点の寸法は,酸化により生成した酸素析出欠陥のサイズとよく一致していた.破壊の起点が欠陥にあることを推定している. (2)高温での応力印加による酸化膜成長の評価 高温(500ないし800℃)かつ酸化雰囲気など雰囲気制御可能な環境で引張試験する装置を開発した.試験片は裏面から赤外線ランプ加熱により所望の温度まで加熱される.加熱系以外の試験装置の構成は従来の薄膜引張試験装置と同じ方法を用いる計画であり,基本的な構成は従来の静電チャック方式の薄膜引張試験装置を利用し,加熱機構,雰囲気制御容器,熱絶縁のための構造などを新たに追加した装置を試作した.最高600度での試験を実現し,単結晶シリコンの塑性変形を観察した.塑性変形の発生は,ひずみ速度に依存することを見出した.これを元に,次年度開発する新たな引張試験装置の開発のための設計データを収集した.
|