研究概要 |
シリコンの破壊機構をより正確にすなわち,応用デバイスの強度や信頼性を設計時に予測可能とするために,シリコンの破壊や疲労のメカニズムを解明する。本年の主要な成果は以下に示す。 (1) 単結晶シリコンの破壊挙動の結晶異方性評価 単結晶シリコンの破壊挙動を理解するために同一の(110)シリコンウエハ上に試験片長手方向が<111>,<110>,<100>方位の引張試験片を作製し、強度評価を行った。強度は<110>試験片が他に比較して強度が高いことが明らかになった。また、破断面を観察するといずれも<111>面での破壊から始まっているとみられる。さらに<110>試験片では切り欠きの先端でない位置から破壊していることがわかった。強度と破壊の挙動の関係とさらに結晶方位との関わりの検討を進めている。 (2) 単結晶シリコン振動子の局所応力評価 単結晶シリコンの引張荷重疲労試験片や共振振動疲労試験用振動子の印加応力の非接触測定法として、顕微ラマン分光装置を導入し、試験中のその場観察を試みている。(5)の扇形振動子の応力集中部における単結晶シリコンのラマンスペクトルを観察し、振動振幅に対応したスペクトルの広がりを観察した。これはこれまでに報告されている単結晶シリコンの応力印加によるラマンシフトの変化でよく説明でき、その場応力評価に用いることができることを確認した。今後は、繰り返し荷重によるラマンスペクトル変化の観察、同時にパルスレーザによる時間分解測定を試みていく。
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