研究概要 |
シリコンを構造材料として用いるMEMSデバイスの強度や信頼性を設計時に予測可能とするために,シリコンの破壊や疲労のメカニズムを解明するための研究を進めた。本年の主要成果を以下に示す。 a) 高温マイクロ材料引張試験:引張試験装置を新たに製作した。静電チャック、引張試験機構を真空容器内に作製し,赤外線加熱により600℃まで昇温する。チャンバーを真空やガス置換した環境下で試験可能であり、より温度均一性の高い装置である。 b) 単結晶シリコンの破壊の結晶異方性評価:シリコンの疲労破壊メカニズムを理解するために、単結晶シリコン試験片の引張試験を実施し、(110)ウエハから作製した<100>、<110>、<111>試験片を用いて、破壊の結晶異方性を評価した。特に切り欠きつき試験片においてへき開面である(lll)面の応力に基づいて統計的ばらつきを考慮したワイブルモデルで、破壊強度をよく説明できることを明らかにした。 c) デバイスレベルの疲労試験:デバイス構造を用いた疲労試験を継続し、結晶異方性の評価を行った。(110)ウエハから作製した<100>、<11O>、<111>試験片の疲労試験の実施を継続している。疲労試験中の局所応力評価手法として顕微ラマン分光を試みているが、時間分解測定手法をパルスレーザにより試みた。感度が現在では不足している。さらに、加工した面の粗さが強度、疲労特性の与える影響を調べるため、レーザアニーリングによる表面性状の改質を試みている。表面平滑化のためのアニール条件を明らかにした。また、破壊直前の試験片や破壊後の試験片の欠陥観察を試みた。
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