研究概要 |
本研究では実用化が進むマイクロ電気機械システム(以下MEMS)デバイスの信頼性の評価手法を提供し、民生、自動車、航空宇宙、医療など広範囲におけるMEMSの応用を促進するため,マイクロ・ナノスケールにおける材料の破壊、特に繰り返し応力下におけるマイクロサイズの脆性材料の破壊のメカニズムを解明することをめざしてきた。本年度においては最終年度として以下の重要な知見を明らかにした。 (1)シリコンの破壊について、加工、環境を高度に制御した試験片を用いて計測値のばらつきを抑えた実験からシリコンの破壊特性を実験的に明らかにした。まず、切欠き付き試験片の破壊の異方性から、破断強度がへき開面である(111)面に対する垂直応力でよく表現できることを明らかにした。さらに、切欠きのない試験片の破壊は加工をよく制御すると、ほぼすべての試験片の破面が(111)面で構成され、強度は加工条件によらず、破壊の起点となっていた加工荒れの寸法とよい相関があることを示した。これらから、シリコンの破壊強度と破壊様式について実用的な知見を得ることができた。 (2)シリコンの疲労について、従来から実施してきた面内曲げ振動試験に加え、面外曲げ共振振動試験方法を開発した。前者はドライエッチングの加工面が破壊を支配する単結晶シリコン構造、後者は薄膜表面の荒さが支配する多結晶シリコン膜であったが、いずれの試験においても初期強度に対応する切欠きを有し、これが繰り返し荷重印加によって成長する亀裂進展モデルで疲労特性を記述可能であることを確認した。また、初期強度のばらつきをワイブル分布で記述し、応力拡大係数範囲に亀裂進展速度が依存するモデルを組み合わせた関係式で、シリコン微細構造体の疲労寿命をモデル化できることを確認した。このモデルはこれまでに報告されたシリコンの疲労強度データともよく一致することを確認した。
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