研究概要 |
構造物の動的応答を再現するためには振動台実験が実施されるが,一般に振動台の制御は,試験体の応答による相互作用の影響を受ける.その制御は試験体が非線形挙動を示すほど困難となるため,複数回の振動台実験による比較研究は難しい.そこで,同一設計,同時製作の16体の試験体を,世界最大震動台E-ディフェンスの1つのテーブル上に設置し,一斉加振することにより,同一動的入力を保証した動的応答特性の基礎データの収集を行った.比較研究の前提条件である入力の同一性を担保しつつ,線形応答から非線形応答に至る地震応答特性の不確定性を評価しうるデータを得ることができた.同種のデータは世界で初めて計測されたものであり,16体という限られた標本数ではあるが,今後の耐震安全性向上のための評価手法の構築に向けて,非常にインパクトの高いものといえる. 代表的な結果として,大きく非線形応答した100%入力において,耐震設計で重要な指標である変位応答の最大値および地震後残留変位に着目する.100%入力による結果では,最大応答値および残留変位の変動係数がそれぞれ3.8%,13.7%であった。入力地震動(応答スペクトル)および構造物の固有周期の変動係数がそれぞれの2.5%,4.8%であること,また非線形動的応答結果であることを考えると,最大応答変位のばらつきは極めて小さいものといえる.これは,非線形化に伴う履歴減衰の影響により,非線形動的挙動本来が持つカオス的挙動が抑制されたと考えることができる.一方の耐震設計指標である残留変位の変動係数は大きく,その変動係数は最大応答値の約4倍程度の値であることは,残留変位を用いた検討における不確定性の議論の基礎データとなる.
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