本研究では、オス涙から分泌されてメスの鋤鼻神経を発火させる性特異的ペプチドESP1(約7 kDa)を認識する受容体の同定およびその受容体を発現している神経が脳のどこに投射しているかという神経回路の可視化を行う。また、ESP1がメスに対してどのようなフェロモン作用をもつか行動解析を行う。最終的には、ESP1受容体ノックアウトマウスを用いて、「ESPI-鋤鼻受容体-神経回路-行動」の一連のシグナル経路を明らかにする。23年度は、ESP1受容体であるV2Rp5の培養細胞での機能発現系の確立を目指し、培養細胞HEK293やアフリカツメカエル卵母細胞でのESP1とV2Rp5の応答の再構成を試みたが未だに成功していない。ESP1刺激により活性化されるメスマウス脳神経回路の解析を行い、視床下部領域の他いくつかの脳領域において活性化される神経細胞の存在を認めた。メスマウス脳においてESP1刺激により放出される神経伝達物質や神経ペプチドの同定をするために、マイクロダイアリシス法を立ち上げた。22年度に、オス涙腺にESP1以外のメス鋤鼻神経活性因子が存在する予備結果を得たので、副嗅球c-Fos発現誘導アッセイを指標に、HPLCによる活性因子の精製をおこなったところ、新規鋤鼻活性タンパク質をひとつ同定した。ESP1-V2Rp5刺激による高次神経回路を可視化するためにV2Rp5-ires-Creトランスジェニックマウスの作製に着手した。
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