研究概要 |
昨年度までに、腸管炎症の誘導に深く関与するTh17細胞の分化誘導を、腸管に特有のCD70high樹状細胞が腸内細菌由来のアデノシン3リン酸依存性に制御していることを明らかにした。今年度は、さらに腸管の免疫制御に関わる特有の自然免疫細胞の同定を試みた。腸管に特有のCD70high樹状細胞が含まれるCD11b陽性、CD11c陽性細胞群をさらに詳細に解析すると、抗Gr-1抗体によりGr-1low, Gr-1highのサブセットに分けられることが明らかになった。各サブセットを単離し、脾臓由来のナイーブT細胞と共培養すると、Gr-1lowサブセットがTh17細胞分化を誘導する樹状細胞であることが明らかになった。一方、Gr-1highサブセットはTh1, Th17, Tregを誘導しなかった。さらに、T細胞の増殖反応を解析すると、Gr-1low樹状細胞により誘導されるT細胞増殖が、Gr-1highサブセットの添加により、著明に抑制された。このT細胞増殖抑制能は、Tregによるものとほぼ同じ効率であった。このように試験管レベルでの解析で、Gr-1highサブセットは、T細胞増殖を抑制する機能を持つことが明らかになった。次に、個体レベルでのGr-1highサブセットの機能を、SCIDマウスにナイーブT細胞を移入し腸炎を誘導する系で解析した。ナイーブT細胞移入時に、Gr-1highサブセットを同時に移入すると、腸管炎症が著明に減弱した。またGr-1highサブセットを同時に移入したSCIDマウスでは、腸管粘膜でのT細胞の増殖が著明に減弱していた。この結果から、Gr-1highサブセットは、腸管粘膜でT細胞増殖を抑制し、腸管炎症制御に関与していることが明らかになった。
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