研究概要 |
RAS癌原遺伝子は歴史上初めてヒトの癌の原因となることが示された遺伝子である。申請者らは2005年にHRASの生殖細胞系列(受精卵に始まり全身に存在)での変異を先天奇形症候群であるCostello症候群で同定した(Aoki et al., Nature Genetics, 2005)。それに引き続き2006年にcarcio-facio-cutaneous(CFC)症候群の原因がKirsten-RAS(KRAS),B型RAFキナーゼ(BRAF)の生殖細胞系列の変異であることを世界に先駆けて報告した(Niihori, Aoki et al.Nature Genetics, 2006)。 これまで細胞の増殖・分化・老化・死における癌原遺伝子の役割に関する研究が行われてきた。申請者らの研究がブレークスルーとなり、RAS/MAPKシグナル伝達経路上の分子がヒトの発生に重要であることが明らかになったが、それを解析するためのモデルマウスはいまだ作製されていない。 この研究の目的は1)患者で同定された遺伝子変異を導入したモデルマウスを作製し、個体の発生・老化・発癌・死における癌原遺伝子の新しい役割を明らかにすることである。また遺伝子変異をもつ患者細胞・組織、変異導入を導入した培養細胞を用いることにより、多角的にヒト細胞でも老化・発癌の現象を検証する。2)これらの研究で得られたシグナル伝達情報を元に、未だ遺伝子変異の明らかでない類縁疾患の新規原因遺伝子を明らかにする。
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