研究概要 |
今年度は、白髪の発症において鍵になる色素幹細胞がどのような自己複製制御を受けているのか、その仕組みとして、幹細胞周囲の微小環境ニッチに着目して研究を行った。ニッチによる細胞外からの幹細胞制御については、色素幹細胞のニッチが色素幹細胞の運命を優勢に決定することを現象として捉えてはいたが(Nishimura EK.et al., Nature, 2002.)、そのメカニズムについては明らかではなかった。我々は、今年度、色素幹細胞と隣接して毛包バルジ領域に存在する毛包幹細胞が、色素幹細胞にとっての機能的なニッチ細胞として働くこと(Tanimura S et al. Cell Stem Cell 2011)、毛包幹細胞の分泌するTGF-βが色素幹細胞に作用し、その未分化性維持と休止期の維持を促進することを明らかにした(Nishimuura EK et a1., Cell Stem Ce11, 2010)。毛包幹細胞が17型コラーゲンを高レベルで発現しており毛包幹細胞の幹細胞性を維持するという役割を持つと同時に、毛包幹細胞が色素幹細胞のニッチ細胞として機能するためにも必須であること、これらの役割により白髪と脱毛を抑えていることが判明した。また、色素幹細胞が休眠状態に入る際に、Bc12が生存に必須となるのは、ニッチ由来のTGF-βシグナルに抗して色素幹細胞が生存する必要があるためであることも同時に判明した。一方、メラノーマ細胞では、TGF-βシグナルに抵抗して生存増殖することも明らかになった。(Nishimura EK et al., Cell Stem Ce11, 2010)
|