研究課題
本研究の目的は中枢神経回路の修復機構の動作原理を明らかにすることである。研究代表者はこれまで中枢神経の再生阻害機構の解明を行った結果、中枢神経回路の損傷後に代償性回路が形成され、これが機能回復に寄与していることを見いだした。この発見はこれまでの常識に反して、中枢神経が可塑性のポテンシャルを有していることを示唆している。そこで本研究では神経回路の再構成現象およびその分子メカニズムの解明を行った。具体的には脳損傷の後に運動を制御する皮質脊髄路が軸索枝を出芽し、神経回路をどのように再構成させるかについて解析した。その結果、中枢神経は成体でも可塑性のポテンシャルを有していることが明らかになった。片側脳損傷の後に、健常側の軸索枝は中脳の赤核、橋核、脊髄の各レベルで対側への投射がみられた。さらに当該現象に免疫系の細胞、特にミクログリアが関与していることが明らかになった。ミクログリアを局所的に消失させることで、軸索枝の出芽が消失し、運動機能の改善が見られなくなった。これらの実験により損傷という局所の刺激が空間的に広がり、中枢神経全体に回路の再編をもたらすに至るメカニズムを明らかにするための系を確立することができ、機能回復に寄与する分子を評価することができた。その結果、複数の細胞内シグナル分子が候補タンパク質として浮上した。本研究は、まったく未知である領域において、新たな神経科学分野を創出し、神経再生治療開発への応用が期待される。
すべて 2008 その他
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J. Neurochem. (印刷中)
Cell Death Differ. 15
ページ: 408-419
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/index.html