研究課題
本研究では、中枢神経損傷動物モデルを用いて、この代償性神経回路を特異的に切断すると、神経機能が悪化することを見いだし、代償性神経回路の形成現象を明らかにした。これまでの一連の研究は、神経系を独立した臓器として捉え、神経細胞-グリア細胞、あるいは神経細胞-神経細胞などの連関に着目したものである。しかしながら、中枢神経障害の病態形成と機能回復の過程には、中枢神経系以外の生体システムが重要な役割を担っていると考えられるが、それに関する知見は極めて乏しい。そこで我々は、免疫系、脈管系に注目して、これらの中枢神経回路障害への関与を検証し、以下の結果を得た。1.神経系細胞に発現している軸索再生阻害因子RGMが、免疫系細胞である樹状細胞にも発現しており、T細胞の活性化を促進し、脳脊髄での炎症を増悪させることにより、中枢神経障害を悪化させることを見いだした。2.免疫系の受容体PirBのシグナル伝達を解明し、これを抑制することで、視神経損傷後の軸索再生が促進することを証明した。3.脊髄損傷後にhelper Th1細胞を移入すると、その後の神経回路の修復と機能回復が促進された。4.脳脊髄炎によって誘導される新生血管が、損傷された軸索を再生させることで、代償性神経回路の形成を促進し、機能回復に寄与することを発見した。以上の結果は、神経系のみならず、免疫系および脈管系に発現する分子が、中枢神経回路の障害の病態形成と機能回復を正と負に制御していることを示唆するものである。
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http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/index.html