本研究では、視覚解析を行うユーザが必ずしも可視化の専門化ではないことに着目し、可視化の専門家ではないユーザが視覚解析を行う場合の適切な可視化技法選択、および可視化パラメタ値設定、可視化アプリケーション設計の支援を行う、可視化の専門家の知識を反映した高可用性データ視覚解析環境の開発を目的としている。 本年度は、昨年度までに開発を行ってきた基本機能の拡充を中心に研究を進めた。主な内容としては、可視化パラメタ値設定支援機能、視覚解析履歴の一括管理環境の整備、試用試験を行った。可視化パラメタ値設定支援では、対象データの特徴を解析し、それに基づいて適切な可視化パラメタ値を自動的に設定することにより、ユーザが試行錯誤的に可視化パラメタ値を決定する従来法と比較して、データの特徴を見逃すごとなく、効率的に特徴をわかりやすく可視化することが可能になった。視覚解析履歴の一括管理においては、視覚解析履歴を一括して保存することにより、あるユーザの視覚解析処理が別のユーザにおいても再利用可能になるだけでなく、一連の視覚解析処理を系統づけて管理できるため、研究の流れを視覚解析の側面から把握できる環境が整った。これにより、これまでは別々に管理されていた試用したデータ、視覚解析処理の流れ、可視化結果などの一括管理が可能となったことから、新たなデータ特徴の発見や異なる可視化処理の利用へとつながっていくことが予想される。 さらに、試用試験として、実データを用いて本システムの有効性の検証を行った。その結果、容易に適切な可視化手法を利用した可視化結果が得られることから、視覚解析経験の浅いユーザや、視覚解析を専門としないユーザにおいては、有効性が高いと考えられる。
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