研究概要 |
前年度までに得られた知見を用い, VR環境下にて広視野の視覚刺激と前庭刺激実験を行い刺激条件を精査し, 視覚・前庭感覚を刺激可能なシステムの試作を行った. 移動知覚に重要な振動成分のみを抽出・提示するためのシステムとして強誘電性液晶を用いた高速シャッターデバイス「Stop Motlon Goggle」(SMG)を試作した. SMGは高速でOn/OH可能な液晶(強誘電性液晶)を用いて, 眼球への視覚情報をOn/ Offすることにより, ストロボ効果を発生させるものである. 本デバイスは通常, 暗所のみで使用可能なストロボスコープに対して照明, 陽光がある状態での仕様が出来るという利点がある. また, 環境に対して光を照らすことによって効果を得るストロボスコープに対して, めがね形式で携帯が可能なSMGは様々な環境で使用が可能で, 今までに考えられなかったような効果があると考えた, Stop Motlon Goggleでのストロボスコープに対する利点は 1. 明るい状態での使用が可能 2. 携帯した状態で使用可能(移動しながら使用可能) ということである. 現在までにSMGを利用して行った実験で, 照明下でストロボ効果による高速物体の認識が可能であるという結果が得られた. さらに2の利点に着目してSMGを移動しながら使用した際にどのような視覚効果, 感覚の変化が得られるかについての研究を行った. 予備実験として被験者が前方を向きながら台車で移動し, SMGを利用した. その結果SMGを使用する場合としない場合で速度感覚, 距離知覚に差が見られた. これらの知見はSMGの「ストロボ効果による視覚的な錯覚」「視覚情報と他の感覚との不一致による効果」といった原因が考えられる. SMGは視覚に働きかけるデバイスである. しかし他の前庭感覚, 体性感覚が関係しているために視覚との矛盾が生じたのか, あるいは視覚のみの効果によって錯覚が生じたのかは現時点では定かではない. そこで, 前庭感覚および体性感覚が今回得られたSMGの効果に関係があるのか今後確認する予定である.
|