研究概要 |
我々は運動中-頭を振っても,走り回っても安定した外界映像を認識することができる. しかしながら現状の遠隔ロボット操作,人工現実感(以下VR)によるシステムでは運動時の映像は安定して知覚されず,所謂VR酔いとして広く知られている.これは視覚・前庭感覚・体性感覚が適切に統合されていないことに起因している. 提示映像の揺れを機械的・電子的に止めることでVR酔いは軽減可能である.しかし申請者は映像の揺れこそが移動感覚に重要なカギであるととらえ,映像の揺れを完全に止めるのではなく,映像が揺れても安定して映像を観察可能なシステムこそが重要であると考える. 本研究の目的はカメラからの映像及び運動情報を実時間で取得・統合・処理し,視覚ディスプレイ及び機能的電気刺激等による前庭感覚提示を行うことにより,我々生物が知覚しているような安定した「視覚・前庭感覚統合伝送システム」を構築することにある. 本研究により運動感覚を損なうことなく,遠隔地やVR空間移動時の映像を安定して観察可能なシステム構築のための設計指針を得ることが可能となる.将来的には乗り物酔いやめまい軽減のためのシステムへの応用も期待できる.
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