研究概要 |
近年,従来よりも高精細な画像が身近になってきているが,これを表示するための方法に,複数プロジェクタを組み合わせて一枚の画像を投影する方法がある.本研究計画では,そこで問題となるシステムのキャリブレーションのための方法や,投影像を重ねて一枚の画像を実現する新しい投影方法(重畳投影と呼ぶ)を研究している.本年度においては,より高精度な校正を実現するための位相シフト法の改良と,重畳投影の原理の研究を中心に行った.具体的には,位相シフト法によってプロジェクタとカメラの幾何学的関係を求める際,射影幾何学の原理を利用することで従来必要だったような面倒なキャリブレーションの手間を廃し,かつ精度を向上させる方法を開発した.プロジェクタ・カメラ系のキャリブレーションには従来は平面を少しずつ移動させながらパタンを投影する必要があったが,新しい方法ではこれを数回だけ行えばよくなった.また,重畳投影では,プロジェクタの画像を重ねることから,一枚の画像を実現するのに濃淡を加算はできても減算できない非対称性によって,実現される画質が画像そのものに依存することを発見し,その対策を議論した.そこから,重畳投影によって達成できる解像度の上限は,実現しようとする濃淡構造によっては存在しない可能性のあることが分かった.裏面の研究発表の項に記したように,以上はいくつかの媒体に発表している.
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