研究概要 |
本研究課題は,カオティックダイナミクス整合を提案して,自律的に行動を獲得するロボット制御のための強化学習システムを実現するものである.カオティックダイナミクス整合とは,カオス理論に基づいて「制御系のダイナミクスを制約条件やタスクに応じて高速・柔軟に適応させる手法」であり,本システムにより,従来よりも少ない学習回数と短い学習時間,従来よりも広い安定化制御可能な状態空間の実現を目標としている.本年度の計画は,ロボット制御のための高速強化学習システムの設計を行い実現することであった.これに対し,以下の成果を得た. 1.ロボットによる倒立振子安定化の達成:異なるダイナミクスを持つ系に対して,同じ制御測と制御パラメータを持つコントローラ(動的カオス制御器)で安定化制御が可能な技術を応用し,ロボットによる倒立振子の安定化制御システムを構築した.その結果,理論的にパラメータが変動した場合でも安定化が達成できることを示し,シミュレーションによっても確認した.2.発振器モデルを用いた制御機構の開発:簡素な電子回路モデルを利用して,動的カオス制御による安定化制御機構の開発を進めた.その結果,安定化のためのパラメータや初期値に対する理論的な見地を得ることが出来,強化学習システムを組み込むための基礎が完成した.3.事象関連電位を利用した強化信号の取得:脳波計を利用した実際の測定および解析によって,強化学習に用いる強化信号をヒトの脳波から獲られる事象関連電位によって推定できる可能性を示した.
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