神経変性疾患において、細胞老化に伴い、ある蛋白質が凝集し、それを鋳型として初めて神経変性疾患原因蛋白質が異種蛋白質凝集体と交差相互作用して凝集する可能性が考えられる。実際、このような例が酵母プリオンで起こることが知られている。しかし、そのような可能性はこれまでにほとんど調べられていない。本研究では、オリゴマーレベルを含む凝集体を介したクロスシーディングを高効率に検出するために、申請者がこれまでに使用してきた酵母プリオンSup35を用いたレポーター系を用い、神経変性疾患の中でも原因蛋白質の凝集(オリゴマーを含む)化と疾患発症の関与が指摘されているポリグルタミン病に着目し、その新たな発症機構の解明および治療戦略の開発を目的とする。さらに、本研究を通して、「Functional Amyloid(機能的アミロイド)」の発見を目指す。 本年度はまず、組み替え酵母に関しては、酵母プリオンSup35蛋白質のアミノ末端に存在する凝集ドメインをポリグルタミンリピート(Q60リピート)で入れ替えたキメラSup35蛋白質を発現する酵母(Q60酵母)を作製した。さらに、非プリオン化状態のQ60酵母に対して、Q60-GFPの過剰発現だけではプリオン化できないように改変を行った。これら組み替え酵母と、酵母の全遺伝子をガラクトース存在下で発現させることのできる遺伝子ライブラリーを構築し、Q60をプリオン化させることのできる遺伝子のスクリーニングを行った。 スクリーニングに実験の再現性を異なる方法で確認した結果、5個の遺伝子が有意にQ60をプリオン化させることが明らかになった。また、これらの遺伝子産物をGFP融合蛋白として酵母内で発現させたるプラスミドを作製し、高い発現させたところ、凝集体を形成することが明らかとなった。今後、これら遺伝子産物のアミロイド性やその物性と構造、また、機能変化を調べる予定である。
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