研究概要 |
平成19年度は単体で流路を流れる赤血球の変形挙動と溶血過程の解析を中心に研究を進めた. 1.単純流路内を流れる単体赤血球の変形挙動シミュレーション 赤血球膜を機械バネのネットワークで表現した赤血球モデルを作成した.T字管,バックステップ流路などの単純形状流路形状に赤血球モデルを流動させ,赤血球の変形挙動および応力状態について解析した.溶血は赤血球膜の局所的な過剰伸展によって生じると考えて,膜面上最大主ひずみによって溶血を評価し,それを既存の溶血指標と比較した.結果として,両者の間に一意の関係は認められず,溶血評価において,個々の赤血球変形を考慮することの重要性が示唆された. 2.invitro実験による単体赤血球の流動速度計測および変形挙動の分析 高速共焦点スキャナーとマイクロPIVとを組み合わせ,流動する赤血球の変形よび流速を計測した.変形を観察した結見,赤血球は大きく変形しながら流動していることがわかった.その一方で,赤血球近傍以外では巨視的な流れ場に赤血球がない場合と比較してほとんど変化がないことがわかった. 3.赤血球の変形モデルのパラメータ同定 赤血球を定常および非定常せん断流中に配置し,赤血球に作用するせん断応力と赤血球の伸び比とを比較した.結果として,赤血球膜面のせん断に対するバネを一定値とした場合には,赤血球モデルは実験値と比較して過大に伸張することがわかった.これを抑制するために,ばねの伸び率に対して指数関数的にバネ定数が増加する非線形ばねを導入したところ,赤血球変形を実験値と定性的に一致させることができた.最終的に最適パラメータを探索し,実験値を再現するパラメータを同定した.
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