研究概要 |
平成20度は赤血球の変形挙動に関連した溶血指標を構築することを目的として研究を進めた. 1.赤流動する赤血球の変形解析とそれに基づく溶血指標の提案 平成19年度に作成した赤血球モデルを用いて, 定常せん断流, 狭窄管路内, T字管内を流動する赤血球の変形解析を行い, 変形に伴い赤血球に蓄積されるエネルギーの観点から, 既存 の溶血指標と赤血球京の面内変形および曲げ変形との関係について検討を行った. 結果より, 溶血の評価においては赤血球膜の面内変形だけでなく, 曲げのような面外変形も評価する必要があることが示唆された. また, エネルギーの観点から面内変形および面外変形を比較・検討することは溶血が生じる力学的要因について同定する手段かなり得ると考えられた. 2.in vitro実験による赤血球の流動計測 マイクロPIVシステムにより, 赤血球容積率0, 5, 10, 15, 20%における赤血球の流動状態を調べた. 結果として, この程度の赤血球容積率では巨視的な流れ場には, 赤血球変形の特性はほとんど反映されないことがわかった. また, 赤血球膜が降下しても流れに与える影響ほとんどないことが分かった. 3.多量の赤血球による赤血球流動解析 生理学的赤血球容積率である35%になるように直円管内に赤血球を満たして, 赤血球流動の計算を行った. 結果として, せん断流により赤血球は全体として管中央に移動する傾向があり, それにより赤血球同士の衝突が起こることがわかった. この衝突により壁から中央に向かった赤血球は再び壁面方向に押し戻されて, 赤血球が変形していく様子が観察された。
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