研究概要 |
平成21年度は溶血シミュレータの開発を目標に研究を進めた. 1. 単純流路内における溶血シミュレーション 昨年度までに構築した赤血球モデルをY字分岐管内に流動させ,壁に衝突させる計算を行った.計算の結果,赤血球は初め紡錘形状をしていたが,壁に近づくにつれて赤血球下流側がへこみ,壁面と衝突した際には膜が完全に屈曲していた.赤血球膜面の面積ひずみを評価したところ,衝突時において最大で1.8と著しく大きな値となっていた.実際の赤血球を用いた実験においては衝突時に溶血が生じていること,また,分子動力学シミュレーションから面積ひずみが1.5になると赤血球膜に孔が生じることが示されていることから,面積ひずみを評価することにより,溶血をシミュレートできることがわかった. 2. 人工血液ポンプ内の溶血シミュレーション 実際に使用されている人工心臓内にこれまでに構築した赤血球モデルを流動させた.流動につれて赤血球は激しく変形した.特に,人工心臓内の血流を駆動するインペラ部を通過する際に,赤血球は著しく変形する様子が観察された.
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